Column l コラム
2015/1/8
TITLE : 年頭のご挨拶
はじめに
志気は鋭ならん事を欲し、躁履は端ならん事を欲し、 品望は高ならん事を欲し、識量は豁(かつ)ならん事を欲し、
造詣は深ならん事を欲し、見解は実ならん事を欲す。 【言志後録55 佐藤一斎】
|
「意気込みは鋭くありたい。行い(躁履)は正しくありたい。品位や人望は高くありたい。見識や度量は広く大きくありたい。学問や技芸を究める事は深くありたい。物に対する意見・見方は真実でいたい。」【言志四録心の名言集:久須本文雄著・講談社】
この言葉を残した 佐藤一斎(1772~1859)は江戸浜町に美濃岩村藩士の次男として生まれ、安永元年から天保、安政へと外圧に晒され崩壊して行く江戸幕府にあって、林家の大学頭を支え活躍した儒者でした。その思想は門人であった佐久間象山から吉田松陰へと引き継がれ明治維新の思想の原点となったと言われています。佐藤一斎の語録四編1133条は、一斎の円熟した後半生40年にわたる随想録「言志四録」として未だ人口に膾炙されています。
年頭にあたり、コンサルティング業務をライフワークとしている自分自身に対する叱咤の言葉とし、且つ今後の経営に責任を持つ者として考えなければいけない全てが、佐藤一斎の言葉に込められているものと深く受け止めています。
「顧客第一主義(クライアント・ファースト)」と「意思決定プロセスの明瞭化への寄与(ソフト・コンサルティング)」を旗印に資産運用マネジメント業務に邁進してきた者として、その第一歩を踏み出すにあたり、知行合一の実践者の言葉が示す道は、遥かに遠いものと感じます。しかし、初心に立ち返り千里の道への一歩を踏み出すに際して、かかる覚悟をもってこれからも真摯に歩んで行きたいと考えています。
業務開始にあたって
今般、新しいコンサルティング会社を設立いたしました意図は、資産運用及び運用評価業務を巡るパラダイム転換を考慮した結果とも言えます。
①資産運用コンサルティング・ビジネスにおいては、アセット・アロケーションやマネージャー・ストラクチャー等のコンサルティングという相談行為に留まらず、自家運用や学校法人等のファンドからは、より深く具体的銘柄への運用支援のニーズが高まっています。このような著しい環境変化が見られる事に加えて、金融商品取引法の施行の趣旨を鑑みた際に運用コンサルティング業務の定義をより明瞭にすべき時宜と考えた次第です。
②DC制度の定着とともに、投信評価業務を含むファンドに対する定性・定量評価業務の社会的認知が極めて高まり、評価業務の専門性・自律性が特に重要となって来ています。従って、その客観性・公平性を専門会社として担保する必要性が今まで以上に高まっているのです。
③ 個人投資家の世界においても、高度な専門性に基づく分散投資効果と効率性の追求からグローバルなマルチ・マネージャー型ファンド等への魅力と投入の要請が高まっています。かかるファンドへのデューデリジェンスの充実が必要とされています。
以上の3点を考慮して、当社は、独立性の高い専門企業として、独立系コンサルティング会社としてスタートするに至った次第です。 今後については、これまで以上に資産運用分野における助言指図行為に係る深みと機会が増して来るものと認識しています。リスク・コンプライアンス体制の充実を心掛け、経営ガバナンスを不動のものと致すべく経営に取り組んで行く所存です。
おわりに
人は皆将来を図るも、而かも過去を忘る。
殊に知らず、過去は乃ち将来の路頭たるを。
分を知り足るを知るは、過去を忘れざるに在り。 【言志後録193 佐藤一斎】
|
「人は誰でもこれから先のことはよく考えるが、過ぎ去ったことを忘れてしまっている。ことに、過去が将来への起点であることを知っていない。自分の分限を知り現状に満足して貪らないということは過去を忘れないと言うことにある。」