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  2019/1/11    TITLE : セーフハーバールール策定の為に

  確定給付企業年金基金の常務理事や運用執行理事は、年金資産運用管理者として受託者責任を完遂する責務を負う。そのためには、一つは資産運用面のリスクマネージャーとしての役割、いま一つは財政運営面のタイムパトローラー(時間管理者)としての役割という総合的な危機管理マネージャーとしての役割を果たして行く必要がある。 そこで、年金ファンドの運行管理者の立場として、巨大な年金ファンドと言う船を、如何に静かな安全港(セーフハーバー)に導くべきなのかを述べてみたい。

   第1の留意点は「慎重な専門家の活用」である。長期に亘る資産運用管理には、受託者責任を十二分に理解し、専門家としての誠実性を体現するプルーデントな専門家としての運用会社、年金コンサルタントを活用する事が極めて重要である。同時に、年金資産運用管理者自身もプルーデントなエキスパートとしての努力を積み重ねて行く必要がある事を忘れてはならない。 運用会社は、任意のスチュワードシップ責任を強調しがちであるが、年金コンサルタントの立場から言えば、運用専門家としてこれは当然の理念である。年金資産運用における受託者責任に反する行為は、善管注意義務違反として損害賠償請求の対象として検証されていると言う極めて重い事実を確認認知して行く事が先ず重要である。
  第2点は「意思決定過程の文書記録」である。明瞭な意思決定プロセスを記録管理として残す事で、受託者責任の中核的理念であるプロセス責任を担保することが可能となる。つまり、実践的なポートフォリオ策定や運用機関選択の作業過程を、節目毎に記録管理として残す事は、透明性、コンプライアンス、年金ガバナンスの確立に有意に働くという事である。
  第3点は「運用機関への運用自由度の負託」である。慎重な運用専門家を選択した後、運用役割の指図書により、当該運用守備範囲を示すことは先ず基本である。 その上で与えた運用守備範囲の中で、運用選択の自由度を担保しておく事は、予測し得ない運用リスク管理を行う上で大事な要素である。プロの運用会社の選択の自由度をある程度認めるという事でその高度なリスク管理能力を活用できる余地を残す事となる。

  第4点は「共同運用管理者としての運用機関の採用」である。受託者責任を共有できる運用機関を採用するという考え方に置き換えて対処して行く事が必要である。 運用機関自体がスチュワードシップの考え方を宣言する事は、その誠実性を担保する上では当然と言えよう。しかし、前述の通り、受託者責任の考え方は、究極的には損害賠償請求権を否定するものでは無いという重い責任を有する概念である。 単に誠実であると宣言するだけではなく、運用機関は年金資産運用の本質に迫る理念を年金ファンドと共有する事が重要なのである。
  第5点は、当然のことながら「運用機関の行動監視」である。 元来、運用機関と年金ファンドの管理者及び受益者との間には、大きな情報格差が存在する以上、利益相反行為の存在を全く否定する事は難しい。従って、運用機関の暴走の抑止の為には監視コストを掛ける事で、エージェンシーコストの低位均衡を図る事となる。 以上の5点に留意して年金資産運用管理を行う事によって、巨大な年金ファンドと言う船を安全港へ導く事が可能となり、ここにセーフハーバールールの確立を図る事となろう。

以上




代表取締役社長 飛田 公治
<執筆者>
代表 飛田 公治

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